今は斧を使ったことがある人どころか見たことがある人も少ないだろう。
私が子供の頃の家にはあったが、近所の多くの家には無かったと思う。

近くで見たことがある人は気がついただろうか。
日本の斧の刃の両面に3本と4本の川の字のような溝が彫られている。

「なんのため?」と子供の頃に父に聞いて教えてもらった。

木こりが山で木を切るときに木の神様に手を合わせるそうだ。「これから切らせていただきます」と。その時に供え物として酒と米を供えたいのだが山の中。その代わりに斧の両面に酒を意味する3本の筋、米を表す4本の筋が彫られている。それを木に立てかけて拝むそうだ。

だが、なぜ3本が酒で4本が米なのかも聞いた気がするが忘れてしまっていた。

『木に学べ-法隆寺・薬師寺の美-:西岡常一』(小学館,1988.3.1)という本が発売されて読んだ時にそのなぞは解けた。

三本の方をミキと言います。ミキつまり御酒(みき)のことですから「酒」でんな。
そんで四本ほうがヨキゆうて五穀のことです。ヨキは四大「地水火風」をあらわしてます。地は地面、水は水(みず)、火は太陽、風は空気でんな。つまり四方山(よもやま)の山海の珍味いうことでしょう。

こういう気持ちって大切だと思う。